工場やプラントの制御盤には、
アイソレーター(絶縁器)と呼ばれる機器が設置されています。

しかし新人保全員や電気担当者の中には、

  • アイソレーターって何をしている機器?
  • ディストリビューターとの違いは?
  • 故障するとどうなるの?
  • なぜPLCとセンサーの間に入っているの?

と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

実際の現場では、

  • PLCのアナログ値がふらつく
  • インバータのノイズで測定値が暴れる
  • 接地不良で異常値が表示される
  • 雷サージで入力カードが故障する

といったトラブルが発生します。

こうした問題を防ぐために使用されるのがアイソレーターです。

この記事では電気保全初心者でも理解できるように、

  • アイソレーターの仕組み
  • 4-20mAと1-5Vの違い
  • 点検方法
  • 故障事例
  • トラブルシューティング
  • 更新時期の目安

まで現場目線で解説します。

アイソレーターとは?

アイソレーター(Isolator)とは、4-20mAや1-5Vなどのアナログ信号を伝送しながら、入力側と出力側を電気的に絶縁する機器です。

アイソレーターには大きく分けて3つの役割があります。

 

アイソレーターとは?電気を絶縁する機器です

 

① ノイズ対策

最も代表的な役割です。

インバータやサーボアンプから発生するノイズが計装信号へ混入すると、PLCやDCSの表示値が不安定になります。

アイソレーターを設置することでノイズの影響を低減できます。

② グラウンドループ対策

異なる制御盤や設備間を接続すると、接地電位差によってグラウンドループが発生することがあります。

その結果、

  • 表示値のズレ
  • 測定誤差
  • 誤警報

などが発生します。

アイソレーターは入力側と出力側を絶縁するため、グラウンドループ対策として非常に有効です。

③ PLC・計装機器の保護

落雷や開閉サージが発生すると、PLCアナログ入力カードや制御機器が故障する場合があります。

アイソレーターはサージの影響を軽減し、設備保護に貢献します。

ただし雷対策としてはSPD(避雷器)との併用が推奨されます。

 

 

アイソレーターがないとどうなる?実際の故障事例比較表

 

事例 症状 原因 現場への影響 アイソレーター設置後
インバータノイズ混入 圧力計・流量計の値が暴れる モータケーブルからの誘導ノイズ 誤警報・誤停止 信号安定
接地不良
(グラウンドループ)
PLC表示値が実測値と異なる 機器間の電位差 オペレーター誤判断 誤差解消
雷サージ侵入 PLCアナログカード故障 誘導雷・開閉サージ 設備停止・修理費発生 機器保護
長距離配線 値がふらつく ノイズ重畳 品質異常 安定測定
異なるメーカー接続 通信不安定 基準電位差 データ異常 正常動作
複数機器への信号分配 測定値がズレる 負荷増加 制御不安定 安定分配
溶接機使用時 信号が瞬間変動 高周波ノイズ 誤動作 影響軽減
盤間接続 信号異常 接地方式の違い 誤計測 絶縁で解決

 

4-20mAと1-5Vの違い

 

項目 4-20mA 1-5V
信号方式 電流信号 電圧信号
信号範囲 4~20mA 1~5V
ノイズ耐性 ★★★★★ 高い ★★★☆☆ 普通
長距離伝送 ★★★★★ 得意 ★★☆☆☆ 苦手
電圧降下の影響 受けにくい 受けやすい
断線検知 可能(0mA付近) 困難
信号分配 やや不向き 容易
PLC接続 変換が必要な場合あり 接続しやすい
工場現場での採用率 ★★★★★ 非常に多い ★★★☆☆
屋外設備との相性 ★★★★★ ★★☆☆☆
制御盤内配線との相性 ★★★★☆ ★★★★★
保守性 ★★★★★ ★★★★☆
推奨配線距離 数百m以上可能 数十m程度推奨

 

 

 

 

保全担当者向けトラブルシューティング

私が勤務していた食品工場では、
インバータ更新後に圧力伝送器の値が大きく変動する
トラブルが発生しました。

当初は圧力伝送器故障を疑いましたが、
実際はインバータノイズが原因でした。

アイソレーターを追加した結果、
信号は安定しトラブルは解消しました。

PLC表示が0%の場合

 

確認項目 正常状態 異常時の対応
電源24VDC 正常供給 電源回路確認
ヒューズ 導通あり 交換
入力4mA 測定可能 センサー確認
出力4mA 測定可能 アイソレーター確認
PLC入力 正常受信 入力カード確認

 

新人保全員が最初に覚えるべきこと

アイソレーターは信号を作る機械ではない新人がよく勘違いします。

PLC表示がおかしい

アイソレーター故障とは限りません。

実際には

  • センサー故障
  • 断線
  • 接触不良

の方が圧倒的に多いです。

 

アイソレーター故障と勘違いしやすい事例

 

症状 よくある勘違い 実際によくある原因 発生頻度
PLC表示が0% アイソレーター故障 断線 ★★★★★
PLC表示が異常値 アイソレーター故障 センサー故障 ★★★★★
値が時々飛ぶ アイソレーター故障 接触不良 ★★★★☆
値がふらつく アイソレーター故障 ノイズ混入 ★★★★☆
値が少しズレる アイソレーター故障 センサー校正ズレ ★★★★☆
信号なし アイソレーター故障 電源断 ★★★★★

 

 

実際の現場では、アイソレーター本体よりも「センサー故障・断線・接触不良」の方が圧倒的に多く発生します。

 

アナログ信号トラブル診断フロー

 

手順 確認箇所 測定内容 判断ポイント
センサー出力 4-20mA測定 正常値か確認
アイソレーター入力 4-20mA測定 センサーから信号到達しているか
アイソレーター出力 4-20mAまたは1-5V測定 変換・絶縁が正常か
PLC入力端子 入力値確認 PLC側異常の有無確認

 

トラブル切り分け早見表

測定結果 推定故障箇所
センサー出力なし センサー故障
センサー出力あり・アイソレーター入力なし 断線・端子不良
入力あり・出力なし アイソレーター故障
出力あり・PLC入力なし 配線異常
PLC入力あり・表示異常 PLC設定異常

 

 

アイソレーターの寿命と交換時期

一般的な交換目安

使用年数 判定
0〜5年 正常
5〜10年 点検強化
10〜15年 更新計画
15年以上 交換推奨

交換を検討する症状

  • 出力値のズレ
  • ノイズ増加
  • LED異常
  • ケース変色
  • 異常発熱
  • 絶縁抵抗低下

 

よくある質問(FAQ)

Q1. アイソレーターは必ず必要ですか?

必ずしもすべての設備で必要というわけではありません。

しかし、以下のような環境ではアイソレーターの設置を推奨します。

  • インバータが近くにある
  • モーターが多数設置されている
  • 配線距離が長い
  • 屋外設備と制御盤を接続する
  • 異なる接地系統の機器を接続する
  • 雷サージ対策が必要

アイソレーターを設置することで、ノイズ対策・絶縁対策・グラウンドループ対策が可能になり、PLCや計装機器の誤動作防止につながります。

特に工場やプラント設備では、安定したアナログ信号伝送のために広く採用されています。

Q2. 4-20mAと1-5Vはどちらを選べばよいですか?

工場設備では4-20mAが基本です。

その理由は、

  • 長距離伝送に強い
  • ノイズの影響を受けにくい
  • 断線検知が可能
  • 工場で最も普及している信号方式

というメリットがあるためです。

一方で1-5Vは、

  • 制御盤内の短距離配線
  • PLC入力への接続
  • 信号分配用途

などに向いています。

一般的には、

用途 おすすめ信号
工場設備・屋外設備 4-20mA
制御盤内部 1-5V
長距離配線 4-20mA
短距離配線 1-5V

となります。

迷った場合は4-20mAを選ぶのが基本です。

Q3. PLCの表示値がおかしい場合、最初に何を確認すればよいですか?

PLC表示値が異常だからといって、すぐにアイソレーター故障とは限りません。

実際の現場では、

  • センサー故障
  • 配線断線
  • 接触不良
  • 電源異常

の方が多く発生します。

まずは以下の順番で確認しましょう。

確認項目 チェック内容
電源 24VDCが正常か
配線 断線・緩みがないか
センサー出力 4-20mAが出ているか
アイソレーター入力 信号が届いているか
アイソレーター出力 正常出力しているか
PLC入力 正常に受信しているか

この手順で確認すると、故障箇所を効率よく特定できます。

Q4. アイソレーターの寿命や交換目安はありますか?

アイソレーターの交換目安は一般的に10〜15年程度です。

ただし使用環境によって寿命は変わります。

以下の環境では劣化が早くなる傾向があります。

  • 高温環境
  • 高湿度環境
  • 粉塵が多い場所
  • 振動が大きい設備
  • 雷サージが多い地域

次のような症状が見られた場合は更新を検討しましょう。

  • 出力値が不安定
  • 値がふらつく
  • ゼロ点がずれる
  • LED表示異常
  • 異常発熱
  • 焦げや変色

定期点検と合わせて状態監視を行うことで、突発故障による設備停止を防ぐことができます。

Q5. アイソレーターとディストリビューターの違いは何ですか?

アイソレーターとディストリビューターは似ていますが、役割が異なります。

項目 アイソレーター ディストリビューター
絶縁機能
信号変換
信号分配 ×
用途 ノイズ対策・絶縁 信号分配・絶縁

例えば、

  • PLCへ1系統だけ送る → アイソレーター
  • PLCと記録計へ同時送信する → ディストリビューター

という使い分けになります。

Q6. アイソレーターだけで雷対策はできますか?

完全な雷対策はできません。

アイソレーターは絶縁によって機器保護に役立ちますが、強力な雷サージを単独で防ぐことは困難です。

そのため屋外設備では、

  • アイソレーター
  • SPD(避雷器)
  • 適切な接地

を組み合わせることが推奨されています。

特に、

  • 圧力伝送器
  • レベル計
  • 流量計
  • 屋外計装機器

ではSPDとの併用が一般的です。

 

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