【結論】

  • 長距離伝送やノイズ対策なら4-20mA
  • 盤内配線や複数機器への分配なら1-5V

この2つを覚えておけば、大きく選定を間違えることはありません。

はじめに

「4-20mAと1-5Vはどちらを使えばいいの?」
計装設計や制御盤設計をしていると、このような疑問を持つことがあります。

実際の現場では、信号変換器の選定を間違えたことで、

  • PLCやDCSの値が不安定になる
  • インバータノイズの影響で信号が乱れる
  • 複数機器へ正しく信号を分配できない
  • 2線式伝送器へ電源を供給できない

といったトラブルが発生することがあります。

特に4-20mA電流信号と1-5V電圧信号は、工場やプラントで最も多く使用されるアナログ信号です。そのため、それぞれの特徴や違いを正しく理解することは、安定した設備運用に欠かせません。

この記事では、

  • 4-20mAと1-5Vの違い
  • ノイズ対策と配線のポイント
  • よくあるトラブルと対処法

を、実際の計装現場での事例を交えながら分かりやすく解説します。

 

4-20mA・1-5V信号の歴史的背景と標準化

1.1 計装信号の黎明期と標準化の必要性

20世紀中盤、プロセス自動制御が本格化する中で、各メーカーは独自の伝送信号(電圧、電流、周波数など)を用いていました。このため、異なるメーカー間での機器接続やシステム統合が困難であり、ユーザーは高価な変換器を介するか、単一メーカーでシステムを統一する必要がありました。この状況を打開するため、国際電気標準化会議(IEC)が中心となり、異なるメーカー間でも互換性を持たせるための統一規格が策定されました。こうして誕生したのが、直流(DC)4-20mAおよびDC 1-5Vといった信号です。

標準化によって、ユーザーは機器選定の自由度が増し、システム設計の柔軟性と拡張性が大きく向上しました。IEC 60381-1(旧IEC381)などの国際規格が制定され、現在に至るまで世界中のプラントや工場で採用されています。

1.2 直流信号が選ばれた理由

当時、交流(AC)信号も伝送方式として検討されていました。交流信号は増幅回路のゼロ点ドリフト問題を回避できる利点がありましたが、工場内のモーターや溶接機などから発生する交流ノイズの影響を強く受けるという致命的な欠点がありました。直流信号はフィルタ回路でノイズを除去しやすく、信頼性が高いため、最終的に直流信号が標準規格として採用されました。

1.3 4-20mAと1-5Vの採用理由

• 4-20mA電流信号は、ノイズ耐性・長距離伝送性・断線検知(ライブゼロ)・2線式伝送の実現など、工場環境に最適な特性を持っていたため、世界標準となりました。

• 1-5V電圧信号は、制御装置(DCS/PLC)内部での処理や複数機器への分配が容易であり、電流信号からの変換も簡単なため、広く普及しました

 

4-20mAと1-5Vの違い

4-20mA信号

ノイズに強く、長距離伝送でも誤差が出にくいアナログ電流信号です。0%を4mA、100%を20mAで表すため、断線時に0mAとなり異常を検知しやすい「ライブゼロ」が大きな強みです。2線式伝送器では、この4mAを機器の動作電力としても利用できるため、省配線と省スペースに優れています。

センサやトランスミッタが測定値を電流値に比例して出力する方式です。例えば、0%(最小値)で4mA、100%(最大値)で20mAとなるリニアな関係です。

  • 断線検知(ライブゼロ):もし信号が0mAから始まる場合、受信側は「測定値が0%」なのか「断線している」のか区別できません。そこで4mAを下限とすることで、0mA=異常(断線)と即座に判別できます。
  • 2線式伝送:4mAのベース電流を利用して、センサやトランスミッタの動作電力を供給できるため、配線コスト削減や省スペース化に寄与します。
  • ノイズ耐性・長距離伝送:電流信号は配線抵抗や外来ノイズの影響を受けにくく、数百メートル以上の長距離伝送でも信号減衰や誤差がほとんど発生しません。

電流ループの構成

  • 2線式:電源と信号を同じ2本の線で伝送。省配線で現場設置が容易。
  • 3線式・4線式:センサの消費電力や精度要件に応じて、電源線や信号線を分離する方式も存在します

 

1-5V

主に制御装置や記録計などの入力側で扱いやすい電圧レンジです。4-20mA信号を250Ωのシャント抵抗で電圧に変換することで、1-5V信号が得られます。

  • オームの法則:V = I × R
    4mA × 250Ω = 1V
    20mA × 250Ω = 5V
  • 250Ω抵抗は、1-5Vレンジにピタリと収まるため、計装のデファクトスタンダードとなっています。

シャント抵抗の設置位置と注意点

  • シャント抵抗は信号受信側(入力機器側)に設置することで、伝送路でのノイズや電圧降下の影響を最小化できます。
  • 抵抗値の公差はそのまま電圧誤差になるため、精密抵抗(±0.1%など)を選定することが重要です。

1-5V信号の特徴

  • 複数機器への分配が容易:電圧信号は並列接続が可能なため、記録計や表示器など複数の機器に同時に信号を供給できます。
  • 長距離伝送には不向き:配線抵抗やノイズの影響を受けやすく、長距離では信号減衰や誤差が発生しやすい

 

現場で最も堅実な設計は、『長距離は4-20mAで送り、受信側で1-5Vへ変換する』方法です。これなら配線途中のノイズや抵抗の影響を抑えつつ、PLC/DCS側では扱いやすい電圧信号として処理できます。

 

 

 

実務で押さえる配線・変換・ノイズ対策

まず押さえたいのは、4-20mAは並列分配しないことです。

電流信号をそのまま複数機器へ並列に入れると、分流して正しい値が出ません。

複数出力が必要な場合は、ディストリビューターや2出力型アイソレータを使うのが基本です。逆に1-5Vは近距離なら分配しやすいものの、長距離では不安定になりやすいため、信号受信側で変換する設計が有利です。

4-20mAを1-5Vへ変換する最も基本的な方法は、250Ωのシャント抵抗です。
オームの法則により、4mA×250Ω=1V、20mA×250Ω=5Vとなります。
ただし、抵抗値の誤差はそのまま信号誤差になるため、精密抵抗を選ぶのが重要です。
絶縁や分配も同時に必要なら、単純な抵抗ではなく、アイソレータやディストリビューターを選ぶほうが安全です。

ノイズ対策では、ツイストペアケーブル、シールド線、動力線との離隔が基本です。
シールドは片端接地を原則とし、両端接地によるグラウンドループを避けます。
もし信号がふらつく、値が飛ぶ、設備停止時だけ異常が出る、といった症状があるなら、まずは絶縁不足や接地方法を疑ってください。

 

よくあるトラブルと即効対処法

  • 断線で値が0になる
    4-20mAは0mA、1-5Vは0Vで異常判定されることが多く、PLC/DCS側のアラーム閾値設定も重要です。
  • 1-5Vがふらつく
    長距離配線、ノイズ源の近接、接地不良が原因になりやすいです。
    4-20mA化やアイソレータ追加が有効です。
  • 複数機器につないだら値が狂う
    4-20mAの並列分配が原因の典型例です。必ず分配対応機器を使います。
  • インバータ運転時だけ異常が出る
    EMI対策不足の可能性が高く、配線経路変更、シールド強化、絶縁追加を検討します。

 

よくある質問(FAQ)

  1. 4-20mAと1-5Vはどちらが優れていますか?
    優劣ではなく適材適所です。長距離・ノイズ環境なら4-20mA、盤内や受信側処理のしやすさなら1-5Vが向いています。
  2. 250Ω抵抗だけで十分ですか?
    単純な電流→電圧変換だけなら有効ですが、絶縁、分配、ノイズ対策まで必要なら専用の信号変換器を使うべきです。

 

まとめ|現場で迷わないための最終結論

設計の原則としては、現場〜盤間は4-20mA、必要に応じて受信側で1-5V変換、と覚えておけば大きく外しません。

 

 

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