低圧

誘導電動機の過負荷とは 数式を用いた二つの関係

モーター過負荷時の説明

誘導電動機(以下モーターと記載)ってご存じでしょうか?
三相交流電流をモーターの固定子の電機子巻線に流して回転磁界を作ります。
その結果、回転磁界が回転子を回転させます。
文章だけだと伝わらないですね。詳しくは、また別の記事で紹介しますのでお待ちください

誘導電動機(モーター)が過負荷になると

モーターが過負荷になるとどうなるでしょうか?
工場で勤めてると、モーター内部のベアリングが固着して、
軸が固定されて過負荷になった!!!と言う体験をするかと思います。
つまり、モーターがロックすると電流がいっぱい流れる!!
つまり、固定子の磁界で回転子を回せなくなると過電流が流れる!!
と言うことになります。

この状態がどう言う事かといいますと
すべりが大きくなっているということです。
滑っているんです。

すべりとは?

すべりとは、回転子の回転が固定子の回転磁界より遅れ(滑り)ている状態の事です。

モーターとは、固定子の回転磁界がくるくる回ります。
その影響により、回転子がくるくる回ります。

 

滑りと言うのは、式で表すと


S:すべり(単位なし)
Ns:同期速度(rpm)
N:回転数 (rpm)

 

Nはモーターの軸の回転数を表しています
Nsは同期速度と言い、回転磁界の回転数を表しています。

 

 

Nsの式は、


f:周波数(Hz)
p:極数 (極)

 

 

周波数はご存じかと思いますが、極数については馴染みがないかと思います。
モーターの中にある磁極の数です。

極数と言うのは、下の図のオレンジ色の部分です。
この場合は、8極となります。

この場合、同期速度(Ns)は、下の式のように900となります。

 

 

 

 

 

何故過負荷になるのか?

モーターの電流の式は下記の様に記載できます。
電流Iが大きくなり、サーマルの整定値以上になると
過負荷となります。

I:電流 (A)
E:電圧 (V)
r:抵抗 (Ω)
S:すべり (単位無し)
X:リアクタンス(Ω)

 

この式の特徴は、右辺の分母に存在している S です。
もし、モーターの軸(回転子)がベアリングの損傷により
ロックされてしまったら、回転数(N)は0となります。
つまり滑り値は1となります。

それでは過負荷時(すべり1)と通常時(すべり0.03)を
計算式を用いて比較してみましょう。

通常時(電圧200V / 抵抗(R)10Ω / リアクタンス(X) 10Ωで計算)

 

 

過負荷時(電圧200V / 抵抗(R)10Ω / リアクタンス(X) 10Ωで計算)

 

この二つの式を比べると
過負荷時は約23.57倍の電流が流れることが分かります。

モーターの回転軸がロックされると大量の電流が流れ
電気配線やモーターを損傷させる可能性が発生します。

皆さんもモーターから異音などの異変に気付いた場合は、早急な対応をお願い致します。

まとめ

① モーターは回転磁界を作り、その回転磁界が回転子を回転させる
② モーターが過負荷になると過電流が流れる
その場合、通常の約23.5倍の電流が流れる

 

参考文献

① 電験三種、これでOK
https://yaku-tik.com/denken/k-synchronous-speed-and-slip/